未題

800字のコラム

随筆

岡田尊司『あなたの中の異常心理』

だれもが異常心理を抱えている。人間は、二面性を抱えた生きものなのである。 “身近でみられる心理状態で、正常心理としても認められ、また、極めつけの異常心理にも通じるのが、完璧主義や潔癖症といった完全性や秩序に対する強迫的なこだわりである。” 完…

グレン・ネイプ『ぬいぐるみさんとの暮らし方』

『ぬいぐるみとの暮らし方』ではない。『ぬいぐるみさんとの暮らし方』である。 “この本のように、あまり「普通」ではない本は、必ずやいろんな議論を引き起こすことになると思います。読者の多くは、果たしてわたしが本気なのか、この本の内容が事実なのか…

四方田犬彦『先生とわたし』

師とは脆いものである。四方田犬彦は師の死後、ようやくそれを理解したのである。 “由良君美はひどく立腹したらしく、電話口で何やら性的な話をしだした。酔っぱらっている上に国際電話なので、言葉の半分も聞き取れなかった。「先生、何をいっているのかわ…

福田和也『病気と日本文学』

“芥川は分裂病だったと言ったところで、何も彼らの真実に触れたことにはならない。” 自殺の問題は芥川に限らず、近代日本文学を語るうえで避けてとおれないテーマである。たとえば、イギリスは相続。フランスは借金。ロシアは信仰。ドイツは山。アメリカは幽…

福田和也『作家の値うち』

わたしは、批評が苦手だ。なぜかといえば、批評には相手の弱点を突く、という行為が必要不可欠だからだ。学生時代、「批評とは自らを棚に上げ、相手の矛盾を鋭く述べることである」という見解を記憶に残して以降、なんとなく、なにかを批評することの抵抗感…

福田和也『贅沢入門』

ついに閉ざされた過去と向き合うときがきた。記憶の彼方に残る彼の面影は朧気で、ほとんどその輪郭をとらえることはできない。 “若い人、とくに学生諸君などと話していて、よく子供のことを聞かれます。それも、わりと率直に「子供を産んで、何かいいことが…

村上春樹『職業としての小説家』

“小説家はある種の魚と同じです。水中で常に前に向かって移動していかなければ、死んでしまいます” わたしはつねづね、自分がなぜいまもこうしてパソコンに向かい、飽きもせず文章を生産しつづけるのか疑問におもうことがある。大学三年の秋、毎日毎日ばかみ…

村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』

“ある時期、ある年代のときは、毎日本当にまじめに走らなければいけない。……走り込むべき年代は人それぞれ違うけど、「今は走らなくちゃ」とはっきり決意するときがあるはず。そういうときは無理しても走らないといけない” 年明けの決意は忘れていない。はじ…

村上龍vs村上春樹『ウォーク・ドント・ラン』

いつからかこう考えるようになった。“がんばらないわたしはわたしであってはならない。がんばることだけにわたしの価値があるのだ。”いまおもえばとても極端な発想だけれど、わたしは大真面目に、この原則に従い生きてきた。 わたしのなかのがんばる、とは、…