未題

800字のコラム

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

立川談春『赤めだか』

冒頭からなみだがあふれてとまらなかった。わたしは枕に顔をうずめながら、ほんとうに変わる気があるのかと何度も何度も問うた。 「落語は人間の業の肯定だ」 人間って極限まで追い詰められたら他人のせいにしてでも云い訳しちゃうもんなんだ。 “聴く者の胸…

山岸明子『心理学で文学を読む』

ものがたりの展開を自分の意思で定めることはむずかしい。ひとが夢をみるときその結末を都合よく改変するのが困難なように、でてきてしまう描写について、我々はそれを書き留めることしかできない。 “優れた文学作品は人間性や人間の心理についての深い洞察…

土居健郎『「甘え」の構造』

「甘え」とは日本人の心性の特徴であり、現代の社会不安を理解するために有力な観点を提供する鍵となる概念である。「甘え」はそれ自体が病的心理の基礎にある悪ではなく、「甘え」が何らかの理由により否認され、あるいは意識下に抑圧された場合に害をなす…

岡田尊司『あなたの中の異常心理』

だれもが異常心理を抱えている。人間は、二面性を抱えた生きものなのである。 “身近でみられる心理状態で、正常心理としても認められ、また、極めつけの異常心理にも通じるのが、完璧主義や潔癖症といった完全性や秩序に対する強迫的なこだわりである。” 完…

グレン・ネイプ『ぬいぐるみさんとの暮らし方』

『ぬいぐるみとの暮らし方』ではない。『ぬいぐるみさんとの暮らし方』である。 “この本のように、あまり「普通」ではない本は、必ずやいろんな議論を引き起こすことになると思います。読者の多くは、果たしてわたしが本気なのか、この本の内容が事実なのか…

河合隼雄『こころの処方箋』

人間はたったひとりで生きることはできない。しかし「自立」ということは、長いあいだひとびとのこころを惹きつける標語として、その地位を保ちつづけているようである。 “自立ということを依存と反対である、と単純に考え、依存をなくしてゆくことによって…

四方田犬彦『先生とわたし』

師とは脆いものである。四方田犬彦は師の死後、ようやくそれを理解したのである。 “由良君美はひどく立腹したらしく、電話口で何やら性的な話をしだした。酔っぱらっている上に国際電話なので、言葉の半分も聞き取れなかった。「先生、何をいっているのかわ…