未題

800字のコラム

『マネー・ショート』

 いたい!とこころがぐじぐじ叫ぶ。まわりは笑っている、わたしはとても笑えない。現実を遠くへ追いやるほど、すべての悲劇は喜劇へと転じる。まさにそれだ、みんな、ジョークだとおもっているんだ。
 真実を知りたい。奇麗な薔薇には棘があるよう、ひょっとしてそれは、酷く痛みの伴う作業になるかもしれない。しかし、ほんとうのことを知らないよりはずっと良い。すくなくともわたしは、そうおもう。

 決断を他人に委ねてしまうのは、楽なのだ。自己の責任をとらなくてよい。世の風潮に交われば、なんとなく安心することができる。みんながすすむほうへついてさえいけば、迷子にはならない予感がする。――実際、そういう側面はある。
 世のなかには、有名大学というシステムが存在する。このシステムに組み込まれれば、それをうしろ楯とし、安定を享受することのできる確率は高まる。実際そのようにして、わたし自身、知らないうち幾度となく、そのシステムに守られてきたのだ。

 ゆえに、システム自体を否定するわけではない。むしろ長い年月をかけ残った枠組みにはそれだけの重みがあり、価値がある。尊重せねばならないだろう。問題は、そのシステムのうえに胡坐をかいてはこなかったか、ということだ。
 わたしは、かいたことがある。自信のない決断を実在すらしない他者に委ね、世のなかのせいにしようとしたことがある。そのくせ、うまくいかないと嘆き、挙げ句裏切られた、と、被害者面をしたことがある。
 だからこそ、いま一度問いたい。目のまえにある現実について、果たして我々はしっかり、見極めることができているのだろうか。まわりの風潮に流されてはいないだろうか。常識だと決めつけてはいないだろうか。あるいは、システムの成り立ちを、ちゃんと理解しているのか。