未題

800字のコラム

映画

『マネー・ショート』

いたい!とこころがぐじぐじ叫ぶ。まわりは笑っている、わたしはとても笑えない。現実を遠くへ追いやるほど、すべての悲劇は喜劇へと転じる。まさにそれだ、みんな、ジョークだとおもっているんだ。 真実を知りたい。奇麗な薔薇には棘があるよう、ひょっとし…

『レ・ミゼラブル』

警部は死んだ。彼の揺るぎない信念はさらなる抱擁に打ち砕かれ、死んだ。こころが死んだのだ。こころが死ねば人間は、容易に死ぬことができる。彼は引き金を引かなかった。否、引けなかった。最期に引き金を引くのは人間の身体ではなく、そのこころだ。彼は…

『モテキ』

はじめはともだちのみゆきに誘われ、軽いきもちでついていった。きけば、ツイッターで知り合った幸世くんというおとこのこと、その会社のひとたちとの飲み会に参入するらしい。どうやら彼らはいまどきのIT企業で、ロックフェスなどの運営や、それにかかわる…

『中学生円山』

おとこのこの妄想に限界はないのでしょうか。わたしの両親がまだ付き合いはじめたばかりのころ、こんなやりとりがあったそうです。「なぜそんな体勢でテレビを見ているの?」「こうすれば、おねえさんのパンツを拝めるかもしれないだろう!」そこには、テレ…

『ルームメイト』

自分だけの妖精さんをつくりだしてしまうのは、実はよくあることかもしれない。それをべつの人物にまで昇華させるのはよっぽどの場合にしろ、どんな人間でも大なり小なり、べつの人格をひとつの器に生成するのは、よくあることだろう。もうひとりの自分。身…

『間宮兄弟』

人間は居心地の良いところにいたがるものだ。仲良しすぎる間宮兄弟は、穏やかな日々を享受していた。日常というのは、ささやかなものだ。そして兄弟は、お互いの日常をあたりまえのように共有している。まるで長年寄り添った恋人同士のように、ふたりの関係…

『わたしを離さないで』

まったく、不思議な重みだ。これはたとえば、今後一週間、わたしの心に纏わりつき、どんよりとした気配を残してゆく類いのものとはちがう。むしろどこかやさしさを、悟りのようなものを与えてくれる。キャシーも、トミーも、ルースも、みんな死んでしまうの…