未題

800字のコラム

漫画

二ノ宮知子『のだめカンタービレ』

どこからかクラシックがきこえてくる。ページを捲る手がなにかの流れに乗っている。でもこれは音楽に、乗っているんじゃない。捲ってから、音がきこえてくるからだ。物語の曲線に誘われている。メロディーはそれにつづく。ページを捲る手が徐々に加速する。…

末次由紀『ちはやふる』

大学二年生、三月。 労働において、身体的労力などたいした問題じゃない。速報原稿をスタジオに突っ込んだり、テープ編集のため階段を何度も駆けあがったり、おりたり。そのせいで汗まみれになっても、足にマメができても、そういうことはとくだん、気にもな…

浅野いにお『おやすみプンプン』

ベーコンマヨロールが急にたべたくなった。ほんとうに急だった。セブンイレブンに電気代を支払いにいったとき、ちょうど目についたのがきっかけだ。ふだん滅多に買うことのないそれに、わたしは熱烈に惹かれていた。 ほんとうは、家にうなぎがあった。ここ何…

古舘春一『ハイキュー!!』

王道らしい王道漫画では、ない。というのも、悪役らしい悪役がこの物語に存在しないからだ。ほかのスポーツ漫画によく登場する、反則によって相手選手を貶めるような邪悪なキャラクターはいない。それぞれがそれぞれの人生を精いっぱい生きている。だから、…

羽海野チカ『3月のライオン』

“「自分の大きさ」が解ったら「何をしたらいいか」がやっと解る。自分の事が解ってくれば「やりたい事」もだんだんぼんやり見えてくる。そうすれば…今のその「ものすごい不安」からだけは抜け出ることができるよ。” いま、どのあたりにいるのだろう。前作、…

ハロルド作石『RiN』

漫画喫茶のトイレの扉は妙に近くて、芳香剤の独特のにおいが鼻についた。あまりにも惨めなきもちにうなだれるよう、無為に便座にとどまっては背中をまるめる。書きたい、書きたい。衝動が襲ってくる。書きたい、書きたい。何度そうおもったか知れない。 しか…